立ち枯れ松が広がるトドワラ

北海道の東部に位置する野付半島は、日本最長の砂嘴（さし）で形成されたユニークな地形の半島です。その先端近くに広がるトドワラは、かつてトドマツの原生林だった場所が、地盤沈下による海水の浸入で立ち枯れてしまった光景です。風化したトドマツの白い幹が、湿原や氷結した野付湾に点在する姿は、まるで異世界に迷い込んだかのような神秘的な雰囲気を醸し出し、「この世の果て」とも称されます。

寒い時期には、この寒々しい景色で体だけでなく心の芯から冷えます。
行く途中も細い半島のようになっているので、左右両方に海が広がり独特な景色が広がります。

トドワラの魅力は、季節によって表情を変えることです。夏は青い空と緑の草木、そして白い立ち枯れ木が織りなすコントラストが美しく、冬には一面が雪と氷に覆われ、「氷平線」と呼ばれる絶景が広がります。特に冬の晴れた日には、野付湾が氷結し、遠くまで続く純白の水平線と、荒涼としたトドワラの景色が調和し、訪れる人々を圧倒します。厳しい自然の中で生まれたこの光景は、命の尊さや時間の流れを感じさせてくれます。

トドワラへは、野付半島ネイチャーセンターから遊歩道が整備されており、散策しながら向かうことができます。時期によってはトラクターバスも運行しており、気軽にアクセスすることも可能です。北海道の雄大な自然と、そこで起こる地質学的変化が作り出した、唯一無二の景観をぜひ体験してください。


【豆知識】
「トドワラ」という名前は、「トドマツの原っぱ」が語源です。地盤沈下は現在も進行しており、トドワラの立ち枯れ木は年々減少していると言われています。いつかはこの光景が完全に失われるかもしれない、儚い絶景でもあります。

【穴場スポット情報】
トドワラの近くには、同様に立ち枯れたミズナラの木々が広がる「ナラワラ」という場所もあります。トドワラとはまた異なる趣があり、両方訪れて比較してみるのもおすすめです。また、野付半島はエゾシカやキタキツネ、オオワシなどの野生動物の宝庫であり、運が良ければ出会えるかもしれません。冬の氷平線ウォーキングツアーも人気です。