江戸の宿場まち智頭宿

智頭宿の町並みを彩るのは、板張りの壁や繊細な格子窓が美しい家々です。特に、この宿場町のシンボルともいえるのが、大庄屋を務めた**「石谷家住宅」**。国の重要文化財に指定されたこの豪壮な邸宅は、広大な敷地と約40もの部屋、そして趣のある庭園を持つ、まさに見応えのある建築物です。当時の最高級の建築技術と暮らしぶりを垣間見ることができ、内部の見学は必須でしょう。他にも、往時の賑わいを伝える建物や、智頭杉の産地ならではの木材を使った堅牢な家屋が連なり、散策するだけでもその歴史の深さに触れられます。

しかし、一方で「過度に期待しすぎると、ちょっと物足りなさを感じるかもしれません」。テーマパークのように完璧に整備された観光地というよりは、実際に人々が生活している日常の中に歴史的建造物が溶け込んでいる、といった趣です。そのため、お店の数はそれほど多くなく、活気という点では他の有名な観光地には及ばないかもしれません。それでも、古民家を改装したカフェやギャラリー、地元産品を扱う小さなお土産物屋さんは点在しており、歴史を感じながらゆっくりと過ごすには最適な空間です。通り庭（とおりにわ）のような宿場町ならではの工夫や、智頭杉の美しい木目をじっくりと観察するなど、通好みの楽しみ方ができる場所です。

智頭宿は、単なる歴史の遺物ではなく、今もなお人々の生活が息づく「生きた宿場町」としての魅力があります。毎年秋には「智頭宿雪まつり」が開催され、雪灯篭や雪像が町並みを彩り、幻想的な雰囲気に包まれます。派手さはないものの、静かで落ち着いた雰囲気の中で日本の原風景や伝統文化に触れたい、という旅慣れた方にはきっと響くはず。地元の人々の温かさに触れながら、歴史の重みを感じる、そんな旅を求める方には強くおすすめしたい場所です。

智頭町は「森の国」とも呼ばれ、良質な「智頭杉」の産地として有名。宿場の建材にも多く使われています。
また、ちょっと変わったところで、近くには伝統的建造物群保存地区に指定された板井原集落が山奥にあります。